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1日13時間働き過労死 朝日ソーラー営業マン 妻が提訴 さいたま地裁

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-09-01/2011090104_02_1.html

 太陽熱温水器などを販売する朝日ソーラー(本社・大分市)の川越支店(埼玉県川越市)で働いていた金澤吾郎さん=当時(36)=が過労死した事件で31日、吾郎さんの妻が同社を相手取り、慰謝料や逸失利益など総額1億3780万円余の損害賠償を求めて、さいたま地裁に提訴しました。

 吾郎さんは2010年3月3日、虚血性心疾患で亡くなりました。訴状によると、吾郎さんは営業職の先頭にたって成績を上げる「隊長」職の立場でした。勤務はおおむね午前8時に出社し、営業を終えて支店に戻るのは午後10時半すぎ。休憩もほとんどなく、1日の労働時間は平均13時間、月の休日は2~3日程度、月平均労働時間は最低でも351時間に及びました。

 さいたま市内で会見した原告弁護士の話によると、支店長(当時)は「労基法なんて関係ない」と話し、会社は勤務時間を午前9時半~午後8時半(休憩は3時間)とする虚偽の「出勤簿兼業務報告書」を作成していました。

 3人の子を育てる妻のめぐみさん(37)=さいたま市西区=は会見で、遺影を手に「本当に悔しい。もう二度と第二の吾郎をつくってほしくない」と語りました。  吾郎さんの死後、川越労働基準監督署は同年3月30日付で労災を認定しています。

(古川弁護士の一言コメント)
訴状記載の労働時間が事実だとすると、1月の法定労働時間(1日8時間・週40時間)は約170~180時間程度ですので、1月あたり170=180時間の超長時間労働の実態があったということになります。労災としての過労死だけでなく、損害賠償が認められてしかるべき事案だと思います。
また、記事のような虚偽の報告書が作成されてしまうと、労基署や裁判所がそれを安易に認定根拠としてしまう恐れがあり、事実であるとすれば悪質な事例であると言えるでしょう。
もちろん、この様なケースであっても、他の証拠を積み重ねることで虚偽を打ち破ることも可能ですので、あきらめずに一度はご相談をされることが大切です。

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「過労死、再発防止を」 企業名公開訴訟が結審 大阪地裁

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110712/trl11071223440023-n1.htm

 大阪労働局が過去に過労死認定した企業名を開示しなかったのは不当として、「全国過労死を考える家族の会」代表、寺西笑(えみ)子(こ)さん(62)=京都市伏見区=が国に不開示処分の取り消しを求めた行政訴訟の最終口頭弁論が12日、大阪地裁(田中健治裁判長)であった。寺西さんが「公表されれば企業が猛省し、再発防止を尽くす第一歩になる」と意見陳述し、結審した。判決は11月10日。

 寺西さんは平成21年3月、大阪労働局に対し、管轄する労働基準監督署が作成した過労死事案の資料にある企業名を明らかにするよう、情報公開請求した。

 請求したのは企業名のみで個人名を含んでいなかったが、大阪労働局は翌月、「個人を識別できる情報が含まれている」と判断して不開示を決定。寺西さんは、弁護士らでつくる「大阪過労死問題連絡会」の協力を求め、21年11月に提訴していた。

 寺西さんは、15年前に飲食チェーンで店長を務めていた夫、彰さん=当時(49)=を過労自殺(自死)で亡くした。意見陳述では「過労死を出した企業の多くは労働基準法に違反しており、就職活動をする上でも企業名は重要な情報。公表することで社会に監視される仕組みが必要だ」と訴えた。

(古川弁護士の一言コメント)
本当に望まれるのは、過労死や過労自殺(自死)が起こらない社会や企業を作っていくことだと思います。その意味で、労災を出した企業を公表することで、その企業に猛省を促す効果が期待できるでしょう。
寺西さんは、京都職対連の幹事としてご一緒に活動させていただいていますが、人間的魅力にあふれた良い方です。

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セクハラ:労災認定の基準見直しへ 事例も示す…厚労省

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110624k0000m040021000c.html

 厚生労働省は23日、セクシュアルハラスメント(セクハラ)による精神疾患を労災認定に結びつけやすくするよう、認定基準を見直す方針を決めた。同省は職場での「心理的負荷」について、セクハラに関してはストレス強度(1~3の3段階)を一律「2」(中程度)と評価しており、特別な事情がない限り労災と認めていない。このため年内にも基準を見直し、継続的な身体接触など悪質事例は最も強い「3」とするよう改める。同日、厚労省の有識者検討会が見直し案をまとめた。

 精神疾患の労災認定は、仕事上のストレスの強さを評価したうえで個々の事情も勘案して判断している。ストレス強度は、退職を強要された(3)▽左遷された(2)▽経営に影響する重大ミスを犯した(3)--など。「3」なら確実に労災認定されるわけではないが、「3」でないと認定されにくい。

 現在、セクハラはひとくくりに「2」と評価されている。特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正できるが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで修正例は少ない。

 このため有識者検討会は、セクハラの中でも、強姦(ごうかん)や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為▽胸など身体への接触が継続した▽接触は単発だが、会社に相談しても対応、改善されない▽言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した--などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきだとした。

 厚労省によると、10年度に各都道府県の労働局に寄せられた2万3000件超の相談の過半数がセクハラに関するもので、11年連続最多。一方、09年度の労災申請のうちセクハラがあったとするものは16件で、実際に労災認定されたのは4件。05年度からの5年間でも、認定は21件にとどまる。【山崎友記子】

◆セクハラに関し、ストレス強度を「3」とする例◆

▽強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為
▽胸や腰などへの身体接触を含むセクハラが継続して行われた
▽身体接触を含むセクハラで、継続していないが会社に相談しても適切な対応がなく、 改善されなかった。または会社へ相談後、職場の人間関係が悪化した
▽性的な発言のみだが、人格を否定するような内容を含み、かつ継続してなされた
▽性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラを把握しても対応がなく、改善されなかった

(古川弁護士の一言コメント)
職場での性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)については、被害に遭われた女性労働者が声を上げにくく、エスカレートしていくことも少なくありません。
できる限りの早期の対策が必要ですし、仮にこれによって精神疾患を発症されてしまった場合には、速やかな救済が求められます。
当相談室でも、セクシャルハラスメントによる労災について、ご相談にのらせていただいています。

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基礎疾病が重くても労災と認定

大阪高裁平成20年12月18日判決(判例タイムズ1334号91頁・町役場職員の過労死についての公務災害事件・上告されましたが最高裁が棄却し、同判決が確定)の事件について。

(波多野弁護士の一言コメント)
この事案は、私が控訴審から関与しました。 少し専門的になりますが、労災の行政訴訟においては、最高裁第2小法廷平成18年3月3日判決(地公災鹿児島県支部長事件・判例タイムズ1207号137頁、判例時報1928号149頁、労働判例919号5頁・バレーボールの際に発症して被災者の方が亡くなられたので、バレーボール事件とよく言われております。)の事案の判断基準が蓄積疲労型の過労死事件にも最高裁法理が適用することができるかという論点があり、国側は蓄積疲労型には適用できないとの主張がよくなされます。このバレーボール事件の判断枠組みは、

  1. 被災者の従事した業務が、同人の基礎疾病を自然経過を超えて増悪させる要因となり得る負荷(過重負荷)のある業務であったと認められること。
  2. 被災者の基礎疾患が確たる発症の危険因子がなくても、その自然経過により脳・心臓疾患を発症させる直前まで増悪していなかったと認められること。
  3. 被災者には他に確たる発症増悪因子はないこと。

というもので、大胆に要約すると過重負荷等のはっきりした業務上の要因があれば、基礎疾病が重くても、それが発症直前までに増悪していない限り、基礎疾病を理由に業務外とはせずに、労災とする(業務起因性を肯定する)というものです。
 高等裁判所の裁判例のほとんどは蓄積疲労型でもバレーボール事件の最高裁判例と同じ判断枠組みで判断しておりますが、大阪高裁平成20年12月18日判決は、蓄積疲労型で、上告などされた結果、最高裁判所が上告を棄却しておりますので、最高裁判所は蓄積疲労型の労災事件でもバレーボール事件と同じ判断枠組みで判断することを肯定していると考えられ、この問題に決着をつけた事件と考えられます。
 労災申請を検討されている相談者の方々におかれましては、過重労働等の業務によって発症したといえるのであれば、基礎疾病が重いからといって労災を断念する必要は原則として必要ないということを念頭に置いて頂ければと思います。

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「日本海庄や」の過労死訴訟 2審も社長らに賠償命令

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110525/trl11052521550011-n1.htm

 飲食チェーン「日本海庄や」に勤務していた息子が死亡したのは過重労働が原因として、両親が経営会社「大庄」(東京)と平辰社長ら役員4人に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。坂本倫城裁判長は「過労の実情を放置し、何ら改善策を取らなかった」として、約7800万円の賠償を命じた1審京都地裁判決を支持、会社側の控訴を棄却した。

 1審は過労死訴訟で初めて、大手企業トップの個人責任を認定。2審も同様に社長らが労働環境の改善を怠ったとして「悪意または重大な過失が認められる」と指摘した。

 判決によると、吹上(ふきあげ)元康さんは平成19年4月に入社し大津市内の店舗に勤務。同年8月に急性心不全のため24歳で死亡した。死亡までの約4カ月間の時間外労働は月平均100時間超で、厚生労働省が定めた過労死認定基準(月80時間超)を上回った。

 控訴審で会社側は、月100時間までの残業を認めた労使協定があり、「外食産業では一般的」と主張したが、坂本裁判長は「過大な残業が常態化し、協定でも補いきれなかったのが実情に近い」と退けた。

 判決後に会見した吹上さんの母、隆子さん(56)は「上場企業なら法令は守られていると息子を送り出したのに、短い時間で旅立った」と悔やんだ。

 大庄広報室の話「ご遺族に改めてお悔やみ申し上げる。判決文を検討し上告するか判断したい」

(古川弁護士の一言コメント)
いわゆる過労死であることが認められたことも大切ですが、特筆すべきは一部上場企業の代表者(社長)が個人責任を問われた事案として、極めて注目に値する事案と言えます。
会社の経営者は、労働者の心身の健康を損なわないような会社内システムを構築する義務を負っています。月100時間を超える労使協定が結ばれていたことなどからしても、本件で会社の代表者の個人責任が認定されたことで、今後、大企業の経営者が、労働者の心身の健康に十分配慮した労務管理を行うようになることが求められています。

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半年前の過重労働でも労災と認定

http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20110419-763544.html

 埼玉県吉川市の男性(当時27)が00年9月にくも膜下出血で死亡したのは、約半年前に退社した会社での過重労働が原因として、両親が国の遺族補償給付の不支給処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁(青野洋士裁判長)は19日までに、請求通り処分を取り消し労災と認めた。判決は18日付。

 原告側弁護士件は「死亡の6カ月以上前の過重労働による労災を認める判決は初」としている。現在の労災認定基準によると、過労による脳や心疾患の労災認定は、発症前6カ月間に過重労働したことなどが要件となる。

 裁判では6カ月より前の勤務状況が労災認定の対象となるかどうかが争われ、判決は「タイムカードなど明確な資料がある場合は評価の対象となる」とした。

 判決などによると男性は1998年8月、都内の会社に入社。00年3月まで同社運営の複数のレンタルビデオ店で勤務し、同年9月に死亡した。月平均時間外労働時間は約60時間だった。

 不支給処分をした足立労働基準監督署(東京)は「判決を検討して判断する」としている。(共同)

(古川弁護士の一言コメント)
過労死が労災として認定される際の目安となる時間外労働時間(直近1ヶ月100時間、6ヶ月平均80時間)は、そもそも疲労が蓄積して脳や心臓などの循環器にダメージを与えることを考慮して定められています。
そこで、発症前6ヶ月以前に過重労働があっても、その後疲労が回復しない状態が続いて(1ヶ月の時間外労働が45時間以上が一つの目安となります)、その後疾病を発症した場合には、業務起因性を認めて労災申請がなされるべきです。
そういう意味でも、報道を見る限り、上記判決は実態を反映した妥当なものだと考えます。
必ずしも労災認定基準に沿わないケースについても労災として認定されるケースもあります。当相談室ではこういったケースについてのご相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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教頭死亡で公務災害認定 「いじめ対応でストレス」

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201101120173.html

 1999年に東京都世田谷区の区立中学校の男性教頭=当時(49)=が心筋梗塞で死亡したのは、生徒同士のいじめから生じたストレスが原因だとして、遺族が公務災害の認定を求めた訴訟で、東京地裁は17日、死亡との因果関係を認め、公務外とした地方公務員災害補償基金(東京)の処分を取り消した。

 渡辺弘(わたなべ・ひろし)裁判長は、教頭の時間外勤務が心筋梗塞を発症するまでの半年間は月平均80時間を超え、発症2日前には、男子生徒複数が一人の男子生徒にビルから飛び降りるよう強要するいじめが起きたと認定。

 その上で「当時は校長不在で、教頭は責任者としていじめの対応を強いられ、心理的負荷が極めて大きくなった。過重な公務に内在する危険が現実化した」と判断した。

 判決によると、男性は98年4月から同校に教頭として赴任。99年6月に心筋梗塞で倒れ、約3カ月後に死亡した。遺族が2001年、地方公務員災害補償基金東京都支部に公務災害と認定するよう求めたが、05年の決定で「公務外」とされた。

(古川弁護士の一言コメント)
現在、学校現場では、学級崩壊やいじめ、モンスターペアレントといった問題が他数生じており、対応に追われる現場の教職員の先生方のストレスは非常に大きいものと思います。また、この被災者の方は管理職であったようですので、教育委員会等との対応など、中間管理職としてのストレスも大きかったものと思われます。
なお、教職員の方たちのメンタルやストレスの問題に取り組んでいらっしゃる精神科医の方のお話を聞く機会がありましたが、ストレスを大きく感じるかどうかは、労働時間等の「量」の問題もさりながらストレスの「質」にも着目すべきである、とおっしゃっておられるなど、非常に勉強になりました。

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中国人実習生の過労死を初認定 1カ月の残業100時間超す

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201101120173.html

 外国人研修・技能実習制度で来日し、実習生として茨城県潮来市の金属加工会社フジ電化工業で働いていた中国人の〓暁東さん=当時(31)=が2008年に死亡した問題で、鹿嶋労働基準監督署は12日までに、長時間労働が原因の過労死として労災認定した。労基署によると、外国人実習生の過労死認定は国内初。

 鹿嶋労基署によると、〓さんは05年に研修生として来日し、同社の金属部品メッキ処理工場に勤務。08年6月、心不全のため社宅で死亡した。亡くなる直前の1カ月の残業時間は100時間を超えていた。遺族が09年8月、労災申請した。

 遺族側代理人の指宿昭一(いぶすき・しょういち)弁護士は「実習生になった2年目以降、残業は月間150時間に上り、休みは月に2日ほどだけだった。同様に働かされ過ぎて亡くなった外国人実習生は全国にいるが、多くが闇に葬り去られている。今回の件は氷山の一角で、過労死認定は遅すぎた」と話した。

 問題をめぐって茨城県の麻生区検は昨年12月、労働基準法違反の罪でフジ電化工業の藤岡丈彦(ふじおか・たけひこ)社長(67)と法人としての会社を略式起訴。麻生簡裁がそれぞれ罰金50万円の略式命令を出し、確定した。

 起訴状によると、2008年3~5月、〓さんら中国人実習生に違法な時間外労働をさせた上、割増賃金約45万円を支払わなかった。

【お断り】〓は「くさかんむり」に「將」を書きますが、JISコードにないため表示できません。

(古川弁護士の一言コメント)
外国人研修・技能制度の悪用で、外国人労働者の方たちが劣悪な労働条件で働いていることが最近問題となっています。
この事件は、その中でも特にひどいものが労災として明らかになったわけですが、このような悪質な事件については、労基署が厳しく指導・是正していく必要があると思います。

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訓練後に死亡の陸自隊員、公務災害認定 防衛省

http://www.asahi.com/national/update/1227/TKY201012270384.html

 陸上自衛隊松本駐屯地(長野県松本市)の1等陸曹(当時48)が駆け足訓練の直後に倒れて死亡したことをめぐり、遺族が公務災害の認定を求めたことについて、防衛省は27日までに、「月平均約80時間の時間外勤務をするなど過重な勤務が原因」として公務上災害と認める決定をした。陸自東部方面隊が公務災害と認めなかったため、国家公務員災害補償法に基づいて防衛省に不服申し立てをしていた。

 代理人弁護士によると、砂原正弘1曹は2005年11月10日、静岡県御殿場市の陸自板妻駐屯地で、昇進に伴う教育訓練中に駆け足を終えた直後に倒れて意識不明になり、3日後に心室細動で死亡した。

 防衛省災害補償審査委員会は、砂原さんが倒れる前の2カ月間に休日出勤や医務室当直、自習など平均月80時間の時間外勤務をしていたことを踏まえ、公務上災害と認定した。

(古川弁護士の一言コメント)
自衛隊員の方の公務災害において、時間外勤務月80時間というラインを重視した事案は珍しく、貴重な判断だと思います。
当相談室の波多野弁護士も弁護団に参加して勝ち取った仙台高裁平成22年10月28日判決の存在が、行政段階での認定を生んだのではないかと推察しています。

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産科医の当直、時間外支払い命じた一審支持 大阪高裁

http://www.asahi.com/national/update/1116/OSK201011160074.html

 産婦人科医の夜間や休日の当直勤務が労働基準法で定められた「時間外手当」の支給対象になるかが争われた訴訟で、大阪高裁の紙浦健二裁判長は16日、対象になると判断して奈良県に計約1540万円の支払いを命じた一審・奈良地裁判決を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却した。

 原告は奈良市の同県立奈良病院に勤める産婦人科医の男性2人。各地の病院の産婦人科医の多くも同じ問題を抱えているといい、代理人の藤本卓司弁護士は「高裁レベルで支給対象と認められたのは初めてで、産婦人科医療に影響を与える可能性がある。問題の背景には産婦人科医の絶対的な不足があり、数を増やすための国の対応が求められている」と話している。

 高裁判決によると、2人は04~05年に210回と213回の当直をこなし、1人は計56時間連続して勤務したケースもあった。これに対し県は「当直は待機時間があり、勤務内容も軽い」として時間外手当の対象外と判断。当直1回につき2万円を支給した。

 紙浦裁判長は、産婦人科医不足で県立奈良病院には県内外から救急患者が集中的に運ばれ、分娩(ぶんべん)件数の6割以上が当直時間帯だったと指摘。当直勤務について「通常業務そのもので、待機時間も病院側の指揮命令下にあった」と判断した。緊急時に備えて自宅待機する「宅直勤務」は時間外手当の支給対象と認めなかったが、「繁忙な業務実態からすると過重な負担で、適正な手当の支給などが考慮されるべきだ」と述べた。

 武末文男・同県医療政策部長は判決後に県庁で記者会見し、「判決に従えば夜間や休日の診療が困難になる。国に労働環境改善と救急医療の両立を図れる体制作りを要請したい」と述べ、上告についても検討するとした。県側は2人の提訴後の07年6月以降、県立病院の医師が当直中に治療や手術をした場合、その時間に限って時間外手当を支給する制度を導入している。(平賀拓哉、赤木基宏)

(波多野弁護士の一言コメント)
産科医(他の医師も同じと思いますが)の方々は、「宿直」と言いながら、24時間即応する中で寝ずに対応しておられます。そういう現実の実態からすれば、当然の判決だと思います。
残業代の問題にしても、過労死・過労自殺(自死)の労災や民事請求の場面でも、大切なのは労働の実態です。形式だけ見て「だめだ」とあきらめずに、当相談室にご相談いただければ幸いです。

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警官自殺(自死)「労災」認定 パワハラの有無は説明なし 福岡

http://www.asahi.com/job/news/SEB201011180058.html

 福岡県警の警察官が2007年1月に飛び降り自殺(自死)したことについて、地方公務員災害補償基金県支部が、公務員の労災にあたる「公務災害」と認定していたことが、遺族や関係者への取材でわかった。遺族は過労に加え、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が原因だと訴えているが、同支部は遺族に認定理由を明かしていない。県警は「調査の結果、パワハラはなかった」としている。

 同支部によると、警察官の自殺(自死)で公務災害が認められるのは珍しく、記録が残っている1989年以降、福岡県警では初めて。

 死亡したのは、県警捜査4課から博多署中洲特捜隊に派遣されていた男性巡査(当時28)。同支部の認定によると、巡査は07年1月18日午前10時過ぎ、同署6階の資料室の窓から転落、出血性ショックで死亡した。同署は自殺(自死)と判断し発表した。

 当時、現職警察官だった巡査の父親(60)や、同僚らによると、巡査は歓楽街の客引きや違法営業の取り締まりを担当。夜間のパトロールに加え、容疑者の取り調べが忙しく、連日、同署や近くのカプセルホテルに泊まっていたという。婚約者とやり取りした携帯電話のメール履歴から、亡くなる直前の10日間のうち4日間は家に帰らず、残り6日間は未明まで働いていたことがうかがえる。

 同署の父親への説明や、同僚らによると、自殺(自死)した日は午前4時近くまで署で仕事をし、近くのカプセルホテルに宿泊。午前8時半に福岡地検に向かった。署に戻った後、取り調べの内容などについて上司2人から叱責(しっせき)を受けた直後に飛び降りたとみられる。

 当時の上司は父親に対し、巡査にだけ毎日反省文を書かせていたことを認めたという。同僚は「反省文を出させて怒鳴りつけたり、容疑者の目の前でしかったりしていた。署員の間でも『いじめでは』という声が上がっていた」と話す。

 父親は08年2月、同基金に公務災害の認定を請求。パワハラがあった疑いが濃厚だとする意見書も添えて出した。今年7月に認定されたが、認定書の「理由」は空欄で、パワハラの有無について説明はなかったという。

 県警警務課によると、博多署が約20人に聞き取り調査をした結果、パワハラの事実は確認されなかった。県警が基金に出した意見書には、巡査が毎日ではないものの反省文を書かされていたこと、人間関係であつれきを感じていたと推察されることを盛り込んだという。長時間勤務については記録が残っていない部分もあり、確認が難しいという。

 同課は基金の県支部窓口を兼ねているが「認定理由は我々も知らされておらず、説明のしようがない。遺族の請求に沿った形で認定され、よかった」としている。

 県警監察官室は「違法行為ではないので、監察官室として調査はしなかった」という。

(古川弁護士の一言コメント)
公務災害認定がなされたことは良かったと思いますが、認定理由の説明が不十分なのは問題があります。
ご遺族にとって,労災が認定されることによって経済的な苦境から救われることに加えて、「なぜこのようなことになってしまったか」を知ることが、これからの再出発にとって重要であることが多いです。そういう意味では,労基署や地公災支部などは、できる限り詳しく認定理由を明らかにしていくべきだと思います。
なお、ご遺族側からのさまざまな手続きによって、認定理由などを知る方法があります。詳しくは当相談室にご相談いただければ幸いです。

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