労災制度と民事賠償について

このページでは、過労死・過労自殺(自死)・過労による脳・心臓疾患等の発症、職場ストレスによる精神疾患に見舞われた方に対する救済・補償制度の概要について説明します。

これらによって命を失われた方、または各種病気(疾病)を発症された場合、

仕事が原因であると認められれば、労災保険の適用が、

②それが雇い主の責任によると認められれば損害賠償が、

それぞれ認められる可能性があります。そこで、以下では、

(1)過労死、過労による脳・心臓疾患とは、

(2)過労自殺(自死)、職場ストレスによる精神疾患とは、

について説明した後、

(3)労災保険制度のあらまし

(4)労災申請手続について

(5)労災認定された場合の保険給付の内容

【死亡された場合の給付】

【ご存命の場合の給付】

(6)労災認定についての判断基準

【脳・心臓疾患の場合】

【自殺(自死)・精神疾患の場合】 

(7)労働基準監督署に労災と認められなかった場合の対応について

(8)民事賠償について

(9)地方公務員や国家公務員の場合(公務災害)について 

の順に、説明します。

※なお、このページでは、ご理解を深めていただくために、労災保険の制度をできる限り単純化して説明しているため、個別の事情によって、結論が異なってくる場合があります。

したがって、この説明を読んだだけで「自分の場合は該当しない」と早合点してしまうことは、可能性を閉ざすことになりかねません。

そこで、あなたのケースがこれらの場合に該当するかどうかについては、当相談室にご相談下さい。

なお、当相談室では、この分野の問題に関して、全国対応で無料相談に応じています。

(1)過労死(過労による脳・心臓疾患事案)とは

過労死とは、

「過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」

とされています。

簡単に言いかえると、

仕事が原因となって脳や心臓に負担がかかり、脳や心臓の病気を発症した

ということです。

具体的に、どのような場合にそうであると認められるか(要件)については、当相談室の

労災認定についての判断基準

民事賠償制度について

の各ページをご参考に下さい。

(2)過労自殺(自死)(精神疾患事案)とは

過労自殺(自死)とは、

「業務上生じた過度な心理的負荷によって精神疾患(うつ、統合失調症、適応障害など)を発症し、これによって自殺(自死)するに至ること」

をいうとされています(※)。

簡単に言いかえると、

仕事上のできごとやストレスが原因となって、精神障害を発症した

ということです。

具体的に、どのような場合にそうであると認められるか(要件)については、当相談室の

労災認定についての判断基準

民事賠償制度について

の各ページをご参考に下さい。

※過労死の場合と異なり、必ずしも長時間の労働があったことが必要とされていないことにご留意ください。

(5)労災認定された場合の保険給付の内容

労災の保険給付は、残された遺族や倒れた被災者の生活を立て直し、支えるために非常に重要です。

労災認定がされた場合、 ①死亡事案であれば、 葬祭料特別支給金年金か一時金年金であれば遺族数に応じて被災者の年収の43%~67%一時金であれば、被災者の年収の3年分近くが、それぞれ支給されます。

また、

②ご存命事案の場合、

治療のための療養補償給付休職した場合の休業補償給付傷病補償給付後遺障害が残った場合の特別支給金や、年金または一時金介護を受けた場合の介護補償給付など、様々な支給がされます。

具体的な給付内容については、以下のページで説明していますが、ご不明の点がありましたら、当相談室にお問い合わせ下さい。

【死亡された場合】

【ご存命の場合】

被災者が死亡された場合、通常の遺族年金などとは別に、

葬祭料

遺族特別支給金

遺族補償年金+遺族特別年金)

または遺族補償一時金+遺族特別一時金)

が、それぞれ支払われます。

①葬祭料

(金315,000円+給付基礎日額の30日分)60万円の高い方が、一時に支払われます。 

なお、葬儀を実際に執り行ったことが必要です。

遺族特別支給金

金300万円が、一時に支払われます。

③(遺族補償年金+遺族特別年金)

 または(遺族補償一時金+遺族特別一時金)

被災者との身分関係などによって、年金または一時金が支払われます。 通常、被災者の収入によって生計を維持していた配偶者18歳未満の子どもなどが受け取る資格がある(「受給権者」といいます)ケースが多いですが、同様の条件での55歳を超える父母の方なども受給権者になる場合があります。

受給権者について詳しく知りたい方は、Q&A「誰が労災保険を受け取れますか?」をご参照下さい。

A 遺族補償年金 と 遺族特別年金

ア 遺族補償年金

給付基礎日額に、下の表の日数をかけた金額が支給されます。

イ 遺族特別年金

算定基礎日額に、下の表の日数をかけた金額が支給されます。

遺族数 支給日数
1人 153日分
2人 201日分
3人 223日分
4人以上 245日分

※ここで「遺族」とは、被災者の死亡時点で、その収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母孫、祖父母、兄弟姉妹を意味します。

つまり、上のアとイで、給与・ボーナスを含めた被災者の1年分の年収を1日あたりに日割り計算して、そのうちの一定日数分が支給されるということです。

B 遺族補償一時金 と 遺族特別一時金

Aで説明した年金の受給権者がいない場合には、被災者と一定の身分関係にある遺族が、受給権者として一時金を受け取ることができます。

一時金の金額は、それぞれ以下のとおりです。

ア 遺族補償一時金 = 給付基礎日額 × 1,000日分

イ 遺族特別一時金 = 算定基礎日額 × 1,000日分

 

一時金の受給権者について詳しく知りたい方は、Q&A「誰が労災保険を受け取れますか?」をご参照下さい。

いずれにせよ、誰が受給権者にあたるかについては、当相談室にお問い合わせ下さい。

(6)労災認定についての判断基準

ここでは、労災を申請した場合、どのような基準で労災認定が行われるかについてのポイントをご説明します。

ただし、重要なことは、ここであげている判断指針に該当しないと思われるような事例でも、簡単にあきらめてはいけない、ということです。

具体的には、(7)労働基準監督署に労災と認められなかった場合の対応についてで説明しますが、労災申請段階で労災と認められなかった事例のうち少なくないものが、裁判官の判断する行政訴訟で労災として認められています。

いずれにせよ、ここで取り上げているのはあくまで一般論ですので、ぜひ一度は、当相談室にご相談されることをおすすめします。

なお、当相談室では、全国対応で無料相談を受け付けています。

1.労災認定基準 -判断指針-

過労死(脳・心臓疾患)や過労自殺(自死)(精神疾患)の労災申請があった場合、厚生労働省・労働基準監督署は、労災かどうかについて、いわゆる「判断指針」(※)にあてはめて判断します。

判断指針の内容については、厚生労働省のホームページ(以下はリンクです)に案内がありますので、ご参照ください。

(1)脳・心臓疾患の労災認定 -「過労死」と労災保険-

(2)精神障害等の労災補償

以下では、判断指針で示される労災認定基準について、できる限り、かみくだいた表現で説明していきます。

2.労災が認められる場合とは -労災認定の要件-

労災が認められるためには、業務災害と認められること、つまり

発症=対象疾病(後述)を発症していること

業務起因性 = ①の発症が業務を原因としていることの二つが必要となります。

つまり、①②のいずれもが認められる必要があるということです。

3.発症について

厚生労働省は、脳・心臓疾患(過労死)、精神疾患(過労自殺(自死))それぞれに、労災認定の対象となる病気(これらを「対象疾病」といいます)を定めており、これを発症したと認められることが必要になります。

(1)対象疾病について

厚生労働省は、それぞれ以下の疾病を対象疾病としています。

ア 脳・心臓疾患

 (脳血管疾患)

  脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症

(虚血性心疾患等)

  心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、解離性大動脈瘤

イ 精神疾患

  うつ病等気分〔感情〕障害(適応障害なども含まれます)、重度ストレス反応等ストレス反応障害など

 

なお、対象疾病でなくても、労災であると認められる場合があります。

(この点については、Q&A「対象疾病でない病気の場合でも労災認定されますか?」をご参照ください)。

(2)発症が明らかでない場合について

過労死や過労自殺(自死)は突然起こることが多いため、通常の労災事故(ケガなど)とは異なり、当該病気になったこと(発症)自体が明らかでない場合もあります。

この場合、医師の診断やカルテなどがあれば、比較的容易に発症が認められる場合が多いですが、特に自殺(自死)の場合などで、そもそも精神疾患を発症していたかどうか自体が問題になる場合が少なくありません。

この点、Q&A「医師の診断書がなければ、労災認定されませんか?」でも取り上げているように、カルテや診断書がなくても、あきらめることはありません。

いずれにせよ、最初からあきらめてしまわないことが大切だと言えるでしょう。

 

4.業務起因性の判断ポイント

業務起因性を判断する際に、それぞれ何を最も重要な判断のポイントとしているかを、シンプルに表にまとめると、以下のようになります。

病気の種類 評価の対象となる期間(発症した日から) 最重要判断ポイント
脳・心臓疾患過労死 直前 当日~前日 「異常な出来事」があったか
短期 1週間 「特に過重な業務」があったか
長期 1ヶ月 時間外労働時間100時間
2ヶ月~6ヶ月 時間外労働時間平均80時間
精神疾患過労自殺(自死) 6ヶ月 強いストレスを生じる「出来事」があったか

なお、それぞれの具体的な内容については以下のページをご参照ください。

【脳・心臓疾患の場合】

【自殺(自死)・精神疾患の場合】

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